引力相互作用する BEC の間欠的崩壊とパターン形成

原子気体のボース・アインシュタイン凝縮 (BEC) はこれまで様々な原子種 で実現されている。 このうち、87Rb, 23Na, 1H は原子間相互作用が斥力で、7Li, 85Rb は引力である。 また、ごく最近、Feshbach 共鳴を利用して相互作用の強さだけでなく符号をも変 えるという実験が成功している。 BEC の性質は相互作用の符号に大きく依存するが、特に引力相互作用の場合には臨 界原子数以上で不安定となり内側へと崩壊することが知られている。

本研究では、引力相互作用する BEC が崩壊する際に予想される、 二つの新しい現象を見出した。 一つは、相互作用を斥力から引力へと急激に変化させた時に、原子密度に殻構造が 形成されるという現象である。 崩壊のアニメーション
図の濃淡像は、原子数100万 の BEC において t = 0 に s波散乱長を 2.8 nm から -1 nm に変化させた場合の t = 0.79 における column density である。 この殻構造形成は、原子密度の揺らぎが引力相互作用のために自ら増幅することに 起因している。

もう一つの現象は、急速に何度も起こる間欠的崩壊である。 図の五つの大きなピークはそれぞれの殻が中心に達したことに対応しているが、そ れらの間の比較的小さい不規則なピークが間欠的崩壊を示している。 この現象は、引力相互作用による原子の集積と非弾性衝突による原子の損失との競 合に起因している。
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